近年、生命保険への加入をめぐっては、「生命保険は必要」という賛成派の意見と「生命保険はいらない」という反対派の意見、賛否両論の声が聞かれます。
この記事では、本当に生命保険は必要ないのか?加入するメリットとしてどのようなものがあるのか、生命保険に加入する必要性が高い人はどんな人なのかについて、改めてまとめました。
生命保険への加入を悩んでいる方のご参考になれば幸いです。
生命保険の基礎知識
生命保険のしくみ
生命保険は大勢の保険契約者が支払った保険料を財源とし、誰かが死亡したときやケガをしたときに保険金や給付金を受け取ることができる「相互扶助」の仕組みによって成り立っています。
上記の「相互扶助」の仕組みを維持するため、生命保険会社は、死亡率を年齢別・男女別に計算した「生命表」をもとに、被保険者の保険料が公平になるように保険料を算出しています。
年齢が上がると保険料が高くなるのは、死亡するリスクが相対的に高まるためです。一方、年齢が若い人にとっては、保険金をもらう機会が少ないので、保険料は安くなります。
生命保険の種類
生命保険には、さまざまな種類がありますが、よく知られているのは「死亡保険」と「医療保険」です。
2つの保険の違いは、保険金等を受け取ることができるタイミングになります。
「死亡保険」…被保険者が死亡したときに保険金等を受け取ることができる商品
「医療保険」…被保険者が病気やケガで入院や手術をしたときに、保険金等を受け取ることができる商品
また、保険金の受取人も、死亡保険は家族などが保険金を受け取るケースが多いのに対し、医療保険は被保険者が本人が保険金を受け取ることが前提となっています。
生命保険の加入率と保険金額の平均
公益財団法人生命保険文化センターが、20代から70代までの男女約2,000人に対して行った「生活保障に関する調査(2022)」によると、生命保険に加入している人は、男性では77.6%、女性では81.5%となっています。
性・年齢別にみると、20代では生命保険の加入率が5割程度にとどまっているものの、30代から60代まではおしなべて8割以上の男女が生命保険に加入していることがわかります。
30代で生命保険への加入率が上昇する理由として、この時期に結婚したり家族が増えることで死亡保障のニーズが高まることが挙げられます。また、30代になると収入が安定し、経済的にもゆとりができることも、生命保険への加入の機運が高まる要因のひとつといえます。
また、月ごとの保険金額の平均は、1世帯あたり約3.2万円となっており(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」(2019年度))、世帯年収に占める保険料の割合は平均で7.2%程度という調査結果となっています。
生命保険がいらない理由と加入するメリット
ここまで生命保険のしくみや種類、加入している人の割合などをご説明してきました。
国民の約8割が加入している生命保険ですが、加入すれば毎月数千円~数万円を保険金として支払うことになります。
本当に生命保険は必要なのでしょうか。
生命保険が「いらない」と考えられている理由と生命保険に入るメリットについてご紹介します。
生命保険がいらない理由
国民皆保険制度があるから
日本は国民皆保険制度を採用しているため、住民基本台帳に記載がある人であれば誰でも、健康保険に加入しなければなりません。公的医療制度を利用すれば、医療費の自己負担が3割程度に抑えられます。
また、病気やケガなので手術や入院が必要になり、医療費が高額になった場合には、「高額療養費制度」を利用することができます。この制度を利用すれば、1ヶ月の間で医療機関や薬局の窓口で支払った額が一定の上限額を超えた場合、申請をすることで超過分を払い戻してもらうことができます。
平均的な所得の人であれば、月の負担上限額は8万円ほどです(厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」)。
「高額療養費制度」は健康保険の一部なので、誰でも利用することが可能です。こうした公的医療保険制度が充実しているために、生命保険はいらない、という考えもあります。
保険を利用する機会が少ないから
生命保険は、実際に死亡したり、ケガをすることがなければ使う機会はありません。
厚生労働省の「令和2年患者調査」では、人口10万人に対しての入院受療率の総数は960人で、換算すると1%にも満たないことがわかっています。
病気やケガをする確率が、統計的には極めて低いために、生命保険に加入する必要はない、ということもできそうです。
貯蓄をしておけば困らないから
生命保険に加入する理由として、「万が一高額な医療費が必要になった時の備え」が挙げられることが多いですが、
貯蓄が十分であれば、「もしも」の時のために生命保険に加入する必要はない、ともいえます。
生命保険に入るメリットとは
いざというときに経済的な負担を和らげることができる
ケガや手術で長期的な療養が必要になった場合、生命保険に加入していれば、給付金を受け取ることができます。
通院特約やがん診断給付金などを特約として上乗せをすれば保障内容をさらに充実させることが可能になります。
また、家計の大黒柱が死亡、あるいは長期的な療養に入るとなると、ご家族の経済的な負担が増加することは免れませんが、
そのようなときにも生命保険の保険金が役立ちます。近年では、何らかの原因で就労が不能になった場合の生活費を保証する就労不能保険についても必要性が高まっています。
所得税と住民税の負担が減る
生命保険に加入していると、その年の1月から12月に支払った保険料の金額に応じて、一定の金額が保険契約者のその年の所得から差し引かれる「生命保険料控除」を受けることができ、所得税や住民税の税負担を軽減することができます。
所得税と住民税の負担を減らすことができるのも、生命保険加入のひとつのメリットと考えられます。
生命保険の必要性が高い人、低い人の特徴
日本は公的医療制度が充実しており、十分な貯蓄があれば生命保険はいらない、という考えがある一方で、大黒柱が死亡したり、長期の療養を余儀なくされた場合には世帯の経済的な負担を和らげるメリットがある点や、税の控除などのメリットがある点についてご紹介しました。
こうしてみると、生命保険か必要かどうかは、加入を検討されている方の状況に大きく依拠していることがわかります。
ここでは、生命保険の必要性が高い人と低い人それぞれの特徴についてまとめました。
生命保険の必要性が高い人
扶養する家族がいる
生命保険の必要性が高い人として、真っ先に挙げられるのがいま子育て中の世帯の方です。
国では、「遺族年金制度」があります。国民年金または厚生年金保険の被保険者が死亡した場合、生計を同一にしていた子と配偶者が受け取れる「遺族基礎年金」、子がいなくても受給できる「遺族厚生年金」の2種類です。
しかし、このような制度があるとはいえ、年間で受給できる金額は限られたものであるうえ、子どもの成長に伴って、教育費は高額になっていきます。
そのように考えると、家族を扶養している立場にある場合、遺された家族のための生活費に目処がついていると安心です。
十分な貯蓄がない
公的医療制度が充実しているとはいえ、入院や手術が必要になってしまった場合の自己負担はゼロにはなりません。
入院時には、働くこともできなくなるので、当面の生活費の工面も必要になります。
貯蓄額に不安がある方は、生命保険に加入し、就労不能保険でいざというときのために備えておくと安心です。
老後の資金を蓄えたい
生命保険のなかには貯蓄性のタイプのものがあり、保障が不要な年齢になったら解約をして解約返戻金を受け取れます。
老後資金を貯蓄する方法としては、生命保険以外にも投資信託があります。
どちらを選択しても、メリット・デメリットはありますが。生命保険であれば大きく損をすることなく、万が一貯蓄中に死亡してしまった場合にも家族に保険金を残すことができます。
相続税対策を考えている
また、生命保険の保険金を相続人が受け取った場合、生命保険の「非課税枠」が適用されるケースがあります。
通常、相続税の基礎控除額を上回る金額を相続した場合には相続税が課税されます。しかし、基礎控除額を上回る額を保険会社に支払い、死後に保険金として相続されれば、相続性を減らすことができる可能性があります。
さらに、配偶者への相続だけではなく、親から子に財産を贈与する手段としても、生命保険を活用することができます。
生命保険の必要性が低い人の特徴
扶養する家族がいない人
扶養する家族がいない場合は、生命保険に加入する必要性がそこまで高いとはいえません。
ご自身に万が一のことがあった場合の葬儀費用や、病気やケガをした場合に備えて当面の生活費を工面することができればよい場合が多いためです。
ただし、若いうちから生命保険に加入していれば保険料は安くなるため、加入しておけばメリットを享受することができます。
いざという時のための貯蓄がある人
繰り返しになりますが、生命保険に加入する最大のメリットは、万が一の時の経済的な負担を和らげることができる点にあります。そのように考えると、十分な貯蓄がある場合には、生命保険に加入する必要性はそこまで高くないかもしれません。
生命保険の必要性はライフステージによっても変化する
ここまでで、生命保険の必要性が加入を検討されている方の置かれている状況によって変化することがわかりました。
実際には、「ライフステージ」と「年代」の2軸の変化が、生命保険の必要性に影響を与えます。
それぞれを詳しくみていきましょう。
ライフステージ別
保険の必要性に最も影響を与えるライフイベントは、出産等で家族が増えることです。
家族が増えると必要な生活費や教育費が増加するため、万が一の場合に備えた生命保険への加入の必要性が高くなり、保障額も高額になります。
家族が増えることに伴って、住宅を購入した場合には団信(団体信用生命保険)に加入するため、住宅費についての将来的な心配はなくなります。住宅の購入は、必要保証額のケースを見直す機会になります。
年代別
最も生命保険加入の必要性が高くなる年代は、一般的に30代から40代にかけてといわれています。
これは、家族が増えたり、親の生活費の仕送りなどが始まり、自分の収入が家計に大きな影響を与えることと関係があります。万が一の場合に備えた保障が大きな意味をもちます。
20代であれば、保障を利用する機会自体が限られており、50代以降は子どもが独立することで必要保証額が減少していく傾向にあります。
まとめ:生命保険は本当に加入する必要がないのか
ここまで、本当に生命保険は必要ないのか?加入するメリットとしてどのようなものがあるのか、生命保険に加入する必要性が高い人はどんな人なのかについて、みてきました。
改めて強調したいのは、生命保険がいらないかどうかは、加入を検討している人の年代やライフステージ、置かれている状況や目的によって異なるため、一般論ではまとめることができない、という点です。
「せいほの窓口」では、FPと宅建資格を所持する生命保険のプロがおひとりおひとりのライフプランを丁寧にヒアリングし、生命保険への加入も含めて最適なご提案をさせていただきます。ぜひ、お気軽に無料相談予約よりご相談ください。